
転職活動の期間が長くなると、経済的負担が大きくなる傾向があります。
そんなときに活用してほしいのが補助金・助成金制度です。
本記事では、転職活動で活用できる補助金・助成金制度について解説します。
この記事を参考に、転職活動で活用できる補助金・助成金制度を把握し、経済的負担を減らしましょう。

転職活動にかかる費用の内訳

リクナビNEXTによると、転職活動にかかる費用の合計は、以下のとおりでした。
合計金額 | 10万円未満 | 10~30万円未満 | 30~60万円未満 | 60~90万円未満 | 90万円以上 | 覚えていない |
割合(%) | 67.6 | 11.5 | 4.4 | 2.4 | 0.6 | 13.5 |
参照元:リクナビNEXT
転職活動では、さまざまな費用が発生します。
ここからは、転職活動で発生する代表的な5つの費用について解説します。
交通費
転職活動では、企業の面接や説明会に参加するために、公共交通機関を利用することより、交通費が発生します。
とくに、面接を複数回実施したり、遠方の企業へ応募したりすると、交通費の負担が大きくなります。
交通費を支給してくれる企業もありますが、支給割合や条件が異なるため、注意しなければなりません。
服飾費
面接では、スーツやオフィスカジュアルなど、ビジネスシーンに適した服装が求められます。
とくに、現職が私服勤務の方や、現在のスーツが古くなっていると、新たにスーツや靴、カバンなどを購入しなければなりません。
スーツや靴、カバンなどを購入する費用が服飾費として発生します。
書類作成費
転職活動では、企業に提出する履歴書や職務経歴書を作成しなければなりません。
応募書類の作成にともない、履歴書用紙や印刷費、証明写真の撮影費などが発生します。
とくに、証明写真は、写真館で撮影すると数千円かかる場合もあります。
また、応募企業ごとに書類を準備するため、郵送費がかさむこともあるでしょう。
生活費
転職活動中は、収入が不安定になる傾向があります。
そのため、一定期間生活するのに必要な生活費の確保が求められます。
とくに、退職後に転職活動をはじめる場合は、家賃や食費、光熱費、通信費などの固定費を自己負担しなければなりません。
また、転職活動が長引くと、貯金を切り崩すことになり、経済的な負担が増します。
引っ越し費用
転職に伴い勤務地が変わる場合、新しい住居への引っ越しが必要です。
その際、引っ越し業者の費用や、新居の敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用が発生します。
また、家具や家電の買い替え、引っ越し先での生活環境整備にも費用がかかることがあります。
とくに、遠方への転職では、移動費や一時的な宿泊費も考慮しなければなりません。
補助金・助成金制度を活用するメリット【4つ】

経済的負担がかかる転職活動を続けるためには、補助金・助成金制度の活用が欠かせません。
ここからは、補助金・助成金制度を活用するメリットを4つ紹介します。
経済的な負担が軽減する
Job総研によると、転職経験者の52.8%が転職による環境の変化で経済的・心理的負担を感じたとされています。
転職活動では、履歴書作成費や交通費、生活費などさまざまな費用が発生します。
とくに、退職してから転職活動をはじめる人は、転職活動による経済的負担が痛手となるでしょう。
しかし、補助金・助成金を活用することで、職業訓練の受講料や転職に伴う費用の一部が補助され、経済的な負担を軽減できます。
新たなスキルや資格を取得しやすくなる
補助金・助成金を活用することで、新たなスキルや資格を取得しやすくなります。
とくに、資格取得講座の受講費の一部または全額が補助される補助金・助成金を活用すると、スキルアップにおける金銭的な負担を軽減できます。
新たなスキルや資格を習得することで、転職市場での競争力を高め、希望する職種へスムーズにキャリアチェンジできるようになりましょう。
失業期間を短縮できる
補助金・助成金を活用することで、転職活動をより効率的に進められます。
特に、求職者支援制度や早期再就職支援助成金を利用すると、金銭的な支援を受けながら新たな仕事に向けて準備できます。
また、企業側も助成金を活用して採用を促進するため、求職者にとっても採用のチャンスが広がり、結果的に失業期間を短縮できるでしょう。
焦りやストレスを軽減できる
転職活動中は、収入の不安や費用負担によるプレッシャーが大きくなりやすい傾向があります。
補助金・助成金を活用することで、職業訓練費や生活費の一部が補助され、経済的な負担が軽減されます。
その結果、焦りやストレスを和らげ、落ち着いて転職活動を進められるでしょう。
また、金銭的な余裕が生まれることで、より自分に合った職場を見極める時間を確保できます。
転職活動で活用できる補助金・助成金制度【6つ】

ここからは、転職活動で活用できる補助金・助成金制度を6つ紹介します。
求職者支援制度
求職者支援制度は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営している制度です。
雇用保険を受給できない求職者が、無料の職業訓練を受けながら、一定の条件を満たすことで「職業訓練受講給付金」として月10万円受け取れます。
求職者支援制度は、主にスキルアップを通じた早期就職を支援することを目的としており、ハローワークを通じて申し込みます。
訓練期間中は、就職活動の実施や出席率などの要件を満たさなければなりません。
教育訓練給付金
教育訓練給付金は、雇用保険の加入者や離職者が対象の制度です。
指定の教育訓練講座を受講した際に、ハローワークで申請すると、費用の一部が支給されます。
教育訓練給付金は、以下の3つに分類されます。
一般教育訓練給付金は、雇用の安定や就職促進を目的とした講座を対象とする教育訓練給付金です。
受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。
対象となる講座には、パソコンスキルや語学、ビジネス関連の講座などがあります。
再就職手当
再就職手当は、失業給付を受けている求職者が、一定の条件を満たして早期に再就職した場合に支給される手当です。
具体的には、失業給付の残り期間が1ヶ月以上残っている状態で、自己都合ではなく、就職活動を経て再就職した場合に支給されます。
再就職手当の支給額は、再就職前に受け取るべき失業給付の一部で、早期再就職を促進するためのインセンティブとなります。
失業保険
失業保険は、失業した際に生活を支援するために支給される給付金です。
雇用保険に加入している労働者が失業した場合、一定の条件を満たすと、失業給付が支給されます。
失業保険の給付期間や支給額は、勤続年数や年齢、退職理由により異なります。
とくに、自己都合退職と会社都合退職では、給付内容が異なるため、注意しましょう。
広域求職活動費
広域求職活動費は、転職活動するために遠方への移動が必要な場合に、交通費や宿泊費などを支援するための助成金です。
主に、ハローワークが提供するもので、遠方の求人に応募する際の経済的負担を軽減することを目的としています。
広域求職活動費の支給対象となるのは、求職活動の一環として面接や求人情報を収集するために必要な移動費用です。
広域求職活動費は、一定の条件を満たすことで受け取れます。
就職促進給付金
就職促進給付金は、雇用保険の受給資格がなく、失業状態の人が就職活動する際に支給される助成金です。
求職活動の費用や転職活動に伴う生活支援を目的としています。
就職促進給付金が支給されるためには、再就職に向けた積極的な活動や訓練を受けることが求められます。
条件をみたしたうえで就職が決まると、就職促進給付金が支給されます。
企業へ支給される補助金・助成金【3つ】

転職を活発にすることを目的とした補助金・助成金は、求職者だけでなく、企業にも支給されます。
ここからは、企業が対象となる補助金・助成金制度を3つ紹介します。
早期再就職支援等助成金
早期再就職支援等助成金は、各都道府県の労働局が運営している助成金です。
離職を余儀なくされた労働者の早期再就職を促進するため、再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇付与や再就職のための訓練を実施したりした事業主に対して支給されます。
早期再就職支援等助成金は、労働者の再就職支援や中途採用の拡大に取り組む事業主を支援し、労働市場の円滑な労働移動を促進することを目的としています。
早期再就職支援等助成金には、以下の4つのコースが設けられており、各コースに応じた支援が提供されます。
早期再就職支援等助成金のコース
- 中途採用拡大コース:中途採用を拡大するための雇用管理制度の整備や取り組みを実施した事業主に対して支給されます。
- 再就職支援コース:離職を余儀なくされた労働者の再就職支援を職業紹介事業者に委託した場合や、求職活動のための休暇を付与した場合、または再就職に資する訓練を実施した場合に支給されます。
- 雇入れ支援コース:再就職支援の対象者を離職後3ヶ月以内に雇い入れた事業主に対して支給されます。
- UIJターンコース:都市部から地方への転職を促進するため、UIJターン転職した労働者を雇い入れた事業主に対して支給されます。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者の処遇改善やキャリア形成を促進するために、企業に対して支給される助成金です。
具体的には、正社員化、賃金規定の改定、スキルアップのための訓練実施などを実施した企業が対象となります。
キャリアアップ助成金には、以下の6つのようなコースがあり、対象の取り組みに応じた助成を受けられます。
キャリアアップ助成金のコース
- 正社員化コース:有期雇用労働者や派遣労働者を正社員として直接雇用した場合に支給されます。
- 障害者正社員化コース:障害者を正社員として直接雇用した場合に支給されます。
- 賃金規定等改定コース:非正規雇用労働者の賃金規定を見直し、2%以上の昇給を実施した場合に支給されます。
- 賃金規定等共通化コース:正社員と非正規雇用労働者の賃金規定を共通化した場合に支給されます。
- 賞与・退職金制度導入コース:非正規雇用労働者に対して賞与や退職金制度を新たに導入した場合に支給されます。
- 社会保険適用時処遇改善コース:社会保険の適用拡大にともない、非正規雇用労働者の処遇を改善した場合に支給されます。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、就職が困難な求職者の早期就職を促進するために、一定期間試行的に雇用した企業に対して支給される助成金です。
対象者には、長期失業者や新卒未就職者、シングルマザーなどが含まれます。
トライアル雇用助成金は、以下の2つのコースが設けられています。
トライアル雇用助成金のコース
- 一般トライアルコース:就職が困難な求職者に対し、原則3ヶ月間の試行的な雇用を実施する事業主に支給されます。
- 障害者トライアルコース:障害者の就職促進を目的とし、試行的な雇用を実施する事業主に支給されます。
トライアル雇用助成金により、企業は求職者の適性を見極めた上で採用を検討できるため、求職者にとっても就職の機会が広がるでしょう。
補助金・助成金制度を活用する際の注意点【5つ】

補助金・助成金を受け取るためには、いくつか注意すべきことがあります。
ここからは、補助金・助成金制度を活用する際の注意点を5つ紹介します。
募集要項
転職活動で活用できる補助金・助成金制度の募集要項は、制度ごとに異なります。
一例として、求職者支援制度では雇用保険の適用を受けていないこと、教育訓練給付金では一定の雇用保険加入期間などがあります。
また、申請方法なども異なるため、事前に確認しておきましょう。
申請期限
転職活動に関する補助金・助成金制度の申請期限は、制度ごとに異なります。
一例として、求職者支援制度は訓練開始前にハローワークでの手続きが必要で、教育訓練給付金は受講開始1か月前までに申請しなければなりません。
また、助成金の種類によっては、企業の申請期限が設けられていることもあります。
各制度の公式情報を確認し、期限内に申請を済ませられるようにしましょう。
必要書類の不備
記入ミスや必要書類の不足、提出期限の未確認などにより、転職活動の補助金・助成金制度の申請時に必要書類に不備が生じることがあります。
必要書類に不備があると、申請が遅れたり、最悪の場合は支給が受けられなくなったりする恐れがあります。
申請前に書類をしっかり確認し、不備を防ぎましょう。
変更・更新手続き
転職活動の補助金・助成金制度では、申請後に状況が変わると、変更や更新手続きが必要になることがあります。
一例として、求職者支援制度では、訓練の中断や再開、教育訓練給付金では、受講内容の変更などが該当します。
手続きを怠ると、支給が停止される恐れがあるため、変更が生じた際は速やかにハローワークや管轄機関に連絡し、必要な書類を提出しましょう。
制度の改正や廃止
転職活動の補助金・助成金制度は、経済状況や政策の変化に応じて改正や廃止されることがあります。
一例として、助成金の支給額や対象者の条件が変更されたり、新たな制度が導入されたりすることもあります。
申請を検討している場合は、最新の情報をハローワークや厚生労働省の公式サイトで確認し、制度の変更に備えましょう。
とくに、廃止予定の制度は、早めに申請してください。
転職活動の経済的負担を軽減する方法【5つ】

補助金・助成金の対象とならない方でも、活動方法を工夫することで、経済的負担を抑えられます。
ここからは、転職活動の経済的負担を軽減する方法を5つ紹介します。

Web面接を活用する
| 転職活動では、Web面接を活用し、転職活動にかかる経済的負担を軽減しましょう。
従来の対面面接では、交通費や宿泊費、スーツの購入費などが必要です。
しかし、Web面接なら移動費が不要になり、自宅から気軽に参加できます。
また、スケジュール調整がしやすく、短期間で複数の企業と面接できるため、早期内定につながります。
Web面接と対面での面接が選べる場合は、Web面接を選択し、効率的かつ負担の少ない転職活動を実現しましょう。

働きながら転職活動を進める
| 働きながら転職活動を進め、収入を維持しながら転職準備しましょう。
離職後に転職活動を進めると、貯蓄を切り崩さなければなりません。
しかし、在職していると、生活費の心配が少なく、焦らずに希望条件に合う企業を探せます。
また、転職活動が長引いても経済的な不安を感じにくく、冷静に意思決定できるようになります。

パソコンやスマートフォンで応募書類を作成する
| 転職活動では、パソコンやスマートフォンを活用して応募書類を作成し、転職活動の経済的負担を軽減しましょう。
紙の履歴書や職務経歴書を手書きで作成すると、印刷代や郵送費がかかります。
しかし、デジタルで作成すると、費用を削減できます。
また、データを保存・編集しやすく、複数の企業に効率的に応募可能です。スマートフォンでも作成・送信ができるため、外出先でも手軽に転職活動を進められます。

無料の転職支援サービスを活用する
| 無料の転職支援サービスを活用し、転職活動の経済的負担を軽減しましょう。
ハローワークや転職エージェント、自治体の就職支援サービスでは、求人紹介や履歴書添削、面接対策などを無料で受けられます。
とくに、転職エージェントは、希望に合った求人の提案や企業との交渉も代行してくれるため、効率的に転職活動を進められるでしょう。
費用をかけずにプロのサポートを受け、転職を成功させましょう。

面接の日程をまとめる
| 面接の日程をまとめて調整し、転職活動の経済的負担を軽減しましょう。
個別に面接を受けると、その都度交通費や時間がかかります。
しかし、同じ日に複数の面接を入れることで、移動コストを削減できます。
また、スケジュール管理がしやすくなり、効率的に企業とのやり取りが進められるでしょう。
とくに、遠方の企業の面接では、出張回数を減らすことで宿泊費や交通費を抑え、経済的な負担を最小限にしましょう。

ーまとめー
転職活動で補助金・助成金制度を利用しよう!

今回は、転職活動で活用できる補助金・助成金制度について解説しました。
転職活動で補助金・助成金制度を活用すると、経済的負担を軽減しながらスキルアップや早期再就職を目指せます。
その一方で、制度によって支給金額や条件などが異なるため、申請しても受け取れない場合があります。
支給条件を確認しつつ、補助金・助成金制度を活用し、転職活動を成功させましょう!
まとめ
転職活動で補助金・助成金制度を利用しよう!

今回は、転職活動で活用できる補助金・助成金制度について解説しました。
転職活動で補助金・助成金制度を活用すると、経済的負担を軽減しながらスキルアップや早期再就職を目指せます。
その一方で、制度によって支給金額や条件などが異なるため、申請しても受け取れない場合があります。
支給条件を確認しつつ、補助金・助成金制度を活用し、転職活動を成功させましょう!