転職すると確定申告しなければならない？必要なケースや流れを解説

確定申告とは、1年間の所得や税額を税務署に申告する手続きです。個人や法人が納める税金額を確定し、不足分を納付したり、払いすぎた分を還付したりします。

転職時の状況によっては、確定申告しなければならないことがあります。

本記事では、転職時に確定申告が必要なケースや確定申告の流れなどを解説します。

確定申告とは？

確定申告では、収入から必要経費や控除額を差し引き、所得税額や住民税額を計算しなければなりません。

正確な所得を申告することで、過不足のない税負担が確保されます。

確定申告と年末調整は、いずれも所得税の納税額を確定させる手続きです。

しかし、対象者と手続きの目的が異なります。

年末調整は、給与所得者が年末に会社を通じて行い、年間の給与や控除を基に正しい税額を確定します。

一方、確定申告は個人事業主や給与以外の収入がある人が自ら実施する手続きです。

全ての所得を合計し、所得税を計算します。

  |給与所得者も医療費控除や住宅ローン控除などの適用を受ける場合、年末調整に加えて確定申告が必要です。

転職後に確定申告が必要な事例【6つ】

転職すると、人によっては確定申告が必要な場合があります。

ここからは、転職後に確定申告が必要な事例を6つ紹介します。

  | 転職先で年末調整が行われない場合、1年を通しての給与が合算されず、所得税の過不足が確認されないままになります。

そのため、確定申告を通じて、自分でその年の収入を正しく申告し、不足があれば追加納税、過剰なら還付を受けなければなりません。

確定申告により正しい納税額が確定し、税務上の問題を避けられます。

  | 前職と転職先の給与の合計が年間20万円を超えると、所得税の計算において年末調整が適用されていない収入部分が発生するします。

通常、年末調整はひとつの勤務先で行われます。

そのため、転職時に複数の職場から給与を得ている場合、その合計所得額に基づいて正確な税額を確定しなければなりません。

複数の職場から給与を得ている場合、年間20万円を超える未調整分の所得があると、確定申告により適切な納税額の確定および追加納税や還付を受ける義務が生じます。

退職金に対して課される税金は、退職時に会社側で源泉徴収されます。

そのため、一般的には、退職金は確定申告が不要とされています。

  | しかし、会社での計算による税額が実際の課税額と異なる場合や、他の収入と合算して課税所得が増えた場合などは、不足分の税額を納める必要が生じるため、確定申告が必要です。

また、退職所得控除の適用が複雑になるケースもあるため、確定申告により税負担の不足や過払いが防止しなければなりません。

年末調整は、会社が社員に代わりに税金を精算する手続きです。

しかし、対応できる控除には限りがあります。

  | 住宅ローン控除の初年度、医療費控除、寄付金控除（ふるさと納税含む）などは、特定の条件に基づいた詳細な申告が必要なため、年末調整では適用できません。

これらの控除を受けたい場合、自ら確定申告することで、正確に控除額が反映され、還付が受けられます。

会社員の場合、通常は給与から源泉徴収され年末調整で税額が調整されます。

しかし、副業収入や個人事業の収入は会社で把握できず、年末調整では精算できません。

  | そのため、20万円を超える所得を得た場合は自分で確定申告し、追加の税金を納めなければなりません。

株式や投資信託の譲渡益や配当金などの投資収益には、所得税と住民税が課税されます。

証券会社の「特定口座（源泉徴収あり）」を利用していると、自動で税金が引かれます。

  | しかし、源泉徴収なしの特定口座や一般口座を利用している場合は、確定申告が必要です。

また、所得控除や損益通算などで税額の軽減を狙う場合も確定申告することで、適切な税額計算と納税が可能です。

確定申告の流れ

ここからは、確定申告の流れを5つのステップに分けて解説します。

転職後の確定申告で注意すべきこと【5つ】

ここからは、転職後のかくて深刻で注意すべきことを5つ紹介します。

  | 転職後の確定申告は、時間に余裕を持って実施しましょう。

転職時は源泉徴収票の入手が遅れる場合があります。

また、新しい勤務先での年末調整が正しく実施されていないこともあるでしょう。

余裕をもって準備することで、必要書類を確実に揃え、記入ミスや記載漏れを防げられます。
また、期限直前に慌てて申告すると、計算ミスや控除漏れが発生するリスクも増え、後で修正手続きが必要になることもあります。

  | 転職後の確定申告では、申告時点での住所や氏名を正確に記載してください。

住所や氏名は、税務署が個人を特定し、申告内容を正しく管理・照合するために必要な情報です。

引っ越しや結婚などにより住所や名字が変わっている場合でも、申告時の情報を基に各種通知や還付金の送付先が決まります。

そのため、最新の情報を記載しておくことで書類が正しく届きます。

また、申告内容に関して税務署から問い合わせがある際も、申告時の住所や氏名を記載することで、迅速かつ確実に対応できるようになるでしょう。

  | 転職後の確定申告で不明点がある場合は、申告相談会場を利用してください。

相談会場には税務の専門家が常駐しており、複雑な収入形態や控除の適用方法、必要書類の準備など、申告に関する疑問点を直接解決できます。

また、相談会場では申告書の記入や電子申告の手続きまでサポートしてもらえるため、申告が初めての場合や転職後の特殊なケースがある場合でも安心して進められるでしょう。

  | 転職後の確定申告では、記入漏れや計算ミスがないか何度も確認してください。

記入漏れや間違いがあると、税務署からの確認連絡や再提出しなければなりません。

再提出が必要になると、手間がかかるだけでなく、最悪の場合、延滞税や加算税が発生する可能性もあります。

また、転職後は収入源が複数になったり、前職や現職からの所得証明が必要だったりと、申告内容が複雑になりやすい傾向があります。

提出前に漏れなく正確に記入されているか確認することで、申告後のトラブルを防ぎ、スムーズに手続きを済ませられるでしょう。

  | 税務署の窓口で確定申告する場合は、税務署の開庁時間を把握しておきましょう。

確定申告は通常、2月16日から3月15日までの期間で実施します。

しかし、税務署の開庁時間は平日の日中が多いため、仕事や予定がある場合には計画的に訪れなければなりません。

とくに、申告書の提出や対面での相談が必要な場合、訪問可能な日時を把握しておくことで、混雑を避けてスムーズに申告できます。

事前に開庁時間を確認し、必要な準備を整えて効率的に申告を進めましょう。

確定申告にはe-Taxがおすすめ

所得税や相続税、贈与税、法人税、消費税など、さまざまな税目に関する申告が可能となります。

また、e-Taxを利用すると、全ての税目について納税手続きをオンラインで完結できます。

さらに、申請や届出、納税証明書の請求や発行などもe-Taxで対応できるため、手続きの効率化が図られるでしょう。

e-Taxは、以下のような流れで利用できます。

確定申告しないとどうなる？

確定申告しないと、以下のような罰則が適用されることがあります。

さらに、故意に申告・納税しない「脱税（ほ脱）」とみなされた場合は、5年以下の懲役や最大500万円の罰金などより厳しい罰則が科されることもあります。

なお、申告忘れの場合でも罰則があるため、期限内の手続きが重要です。

転職時に必要な手続き【4つ】

確定申告以外にも転職時に必要な公的手続きがあります。

ここからは、代表的な公的手続きを4つ紹介します。

住民税は、前年の所得に基づき計算されます。

 一般的に住民税は、給与からの天引き（特別徴収）として支払われていますが、転職すると元の勤務先での天引きが停止するため、支払い方法が変わります。

また、住民税は新しい勤務先が引き継ぐ場合と、自分で納付書により直接支払う普通徴収に変更する場合があり、支払い遅れや二重納付を避けるために速やかに確認・手続きすることが重要です。

転職すると、健康保険の加入先も変わるため、切り替えなければなりません。

 具体的には、前職の健康保険は退職日に資格が失効するため、転職先の会社で新たに加入したり、退職後に国民健康保険に加入したりする必要があります。

無保険状態を避け、医療費負担の軽減を確保するためにも、早急に切り替え手続きを進めてください。

なお、以前の健康保険を「任意継続」できる場合もあるため、保険料や条件を確認して、最適な保険を選択しましょう。

転職にともない年金制度を切り替えることがあります。

会社員として厚生年金に加入していると、退職により厚生年金の資格が失効します。

 転職先が決まっている場合は、新しい勤務先で厚生年金に再加入しますが、転職までに空白期間がある場合には、その間の保険料を国民年金で支払わなければなりません。

年金の切り替え手続きを実施しないと、年金保険料の未納期間が発生し、将来の年金額に影響します。

失業給付金は、雇用保険に一定期間加入していた場合に受けられる給付金です。

 基本的な生活費を補うだけでなく、安心して次の就職活動に専念するための重要な支えとなります。

失業給付金の申請には、ハローワークへの手続きが必要です。

退職後早めに申請しないと、給付の受給開始が遅れたり、受給資格を失ったりすることがあります。