
転職では、転職先の業界や職種だけでなく、転職する時期も重要です。
そんな転職の時期として多いのがボーナスをもらった後です。
しかし、転職活動を進めている方のなかには、転職することを伝えるとボーナスがもらえないのではないかと考える人もいるでしょう。
そこで、本記事ではボーナスをもらってから退職するメリット/デメリットや転職前にボーナスをもらうためにやるべきことなどを解説します。
この記事を参考に、最適な転職時期を見極め、スムーズな転職を目指しましょう。

ボーナスの仕組み

ボーナス(賞与)とは、企業が社員に対して通常の給与とは別に特別な支給として支払う報酬のことです。
企業によっては、以下のような名称・支給形態でボーナスを位置づけています。
ボーナスの呼び方
- 業績連動型賞与:個人や部署、会社全体の業績に応じて支給額が決まるボーナス
- 決算賞与:決算時に利益が出た場合にのみ支給されるボーナス
- 寸志(すんし):中小企業などで支給される金額の少ないボーナス
- 一時金:月給に上乗せする形で、年1〜2回支払われるボーナス
ボーナスは、主に企業の業績や社員の貢献度に応じて支給されるもので、年2回(夏・冬)支給するのが一般的です。
項目 | 給与 | ボーナス(賞与) |
支給頻度 | 毎月 | 年2回が主流(夏・冬) |
支給義務 | 法的に義務がある | 義務ではない(就業規則による) |
支給基準 | 労働時間・契約内容 | 業績・評価・会社方針による |
金額の安定 | 原則固定 | 年ごと・評価によって変動 |
厚生労働省によると、2023年時点で一人あたりの平均賞与額は360,791円と、基本給の1〜2カ月分程度の金額が支給金額の目安とされています。
退職する人にもボーナスを支払わなければならないのか?
ボーナスは法律上、必ず支払わなければならないというわけではありません。
支払の有無だけでなく支給額も企業の裁量で決まります。
そのため、退職する人にボーナスを支払わなくても法律上は問題がありません。
なお、以下のような場合は、必ず支払わなければなりません。
企業がボーナスを支払わなければならない状況
- 就業規則に「〇月に〇万円支給」と明記されている
- 労働契約書にボーナスの支給条件が明確に書かれている
- 過去の支給実績や労使慣行から、支給が当然であるとみなされる
ボーナスをもらってから退職するメリット【3つ】

転職市場において、ボーナスを受け取ってから退職するという流れは珍しくありません。
実際に、ボーナス支給後に退職することで得られるメリットはたくさんあります。
ここからは、ボーナスをもらってから退職するメリットを3つ紹介します。
退職後の生活資金に余裕ができる
ボーナスをもらってから退職すると、退職後の生活資金に余裕が生まれます。
一例として、50万円のボーナスを受け取ってから退職すると、数か月分の家賃や生活費をカバーできるでしょう。
また、金銭的不安が減ることで、落ち着いて転職活動に専念できます。
転職活動に必要な費用について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

入社希望時期を調整しやすくなる
内定辞退を防ぐために、企業はなるべく早い時期に入社したいと考えている人材を求めています。
それにより、入社希望時期が数カ月後だと、選考が不利になる恐れがあります。
しかし、ボーナスを受け取ってからの入社を希望する人は少ないため、受け取り時期が少し先でも企業から理解を得やすくなるでしょう。
また、ボーナスを受け取ってから退職すると決めることで、転職活動のスケジュールを定めやすくなります。
精神的に区切りをつけやすい
人によっては、退職時にやり残したことがないかと心配する人もいます。
しかし、ボーナスをもらってから退職すると、達成感が生まれるため、精神的に区切りをつけやすくなります。
現職のことを引きずらずに新天地で活躍することで、心置きなく自身のパフォーマンスを発揮できるでしょう。
ボーナスをもらってから退職するデメリット【4つ】

ボーナスを受け取ってから退職するのは、一見すると得しかない選択肢と思えるでしょう。
しかし、実はデメリットも存在します。
ここからは、ボーナスをもらってから退職するデメリットを4つ紹介します。
転職のタイミングを逃す可能性がある
一般的に、現職が忙しくない時期や人手が足りている時期に転職することがマナーとされています。
ボーナスを受け取ることに固執して転職時期を先延ばしにしていると、業務量が増えたり、退職・休職者が増えて退職できなくなることがあります。
また、時期によっては引き止められることが多くなるため、自分に合ったチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。
求人の選択肢が減る
通年で中途採用を実施している企業もありますが、なかには自社で抱えている業務量に応じて中途採用を始めたり、募集枠を増やしたりする企業もあります。
ボーナスを受け取ってから退職することに拘りすぎると、そういった転職のチャンスを逃すこともあります。
現職でのストレスが長引く
ボーナスをもらってから退職すると、現職でのストレスが長引く恐れがあります。
一例として、パワハラや過重労働などに耐えながら支給日まで働き続けると、心身に大きな負担がかかります。
現職でのストレスが転職後にも影響を及ぼす恐れがあるため、ボーナスを受け取ることに拘って転職時期を先延ばしすることには、注意しなければなりません。
現職からの心証が悪くなる可能性がある
ボーナスをもらってから退職すると、現職からの心証が悪くなる可能性があります。
一例として、ボーナス支給後すぐに退職を申し出ると、お金だけもらって辞めたと感じる上司や同僚も出てくるでしょう。
その結果、現職の人間関係などに影響を及ぼします。
とくに、同じ業界や関連会社に転職する場合は注意しましょう。
転職前にボーナスをもらうためにやるべきこと【4つ】

転職する人へボーナスを支給することは、法律で義務化されているわけではありません。
そのため、ボーナスを受け取ってから退職するためには、戦略を練る必要があります。
ここからは、転職前にボーナスをもらうためにやるべきことを4つ紹介します。
自社の就業規則・給与規定を確認する
| 転職前にボーナスをもらうためには、自社の就業規則や給与規定を必ず確認しましょう。
一般的に、ボーナスの支給条件は、就業規則・給与規定によって定められています。
一例として、ボーナスの支給条件が支給日に在籍していることである場合は、退職日を1日でも早めてしまうと、ボーナスがもらえません。
思い込みで判断すると予期せぬ損失につながるため、文書でルールを把握しておきましょう。
退職相談の時期を慎重に決める
| 転職前にボーナスをもらうためには、退職相談の時期を慎重に決めましょう。
一例として、支給前に退職の意思を伝えると、会社側の判断でボーナスが支給されないことがあります。
誤解や不利益を避けるためにも、転職エージェントなどに相談しつつ、転職のタイミングを見極めましょう。
有給休暇の消化計画を事前に立てる
| 転職前にボーナスをもらうためには、有給休暇の消化計画を事前に立てておきましょう。
有給取得期間は、働いていなくても現職に在職しているとみなされます。
その一方で、転職時期や社内の忙しさによっては有給休暇を使い切れない恐れもあります。
退職日と支給日のバランスを考慮し、損せずスムーズに退職しましょう。
退職前の有給休暇消化についてお悩みの方は、こちらの記事をご覧ください。

転職先との入社日調整を早めに相談する
| 転職前にボーナスをもらうためには、転職先との入社日調整を早めに相談しましょう。
ボーナス支給日を過ぎてから退職する場合、入社日を数週間遅らせなければならないことがあります。
面接などで事情を事前に説明しておくことで、企業側も柔軟に対応してくれるでしょう。
また、現職にも早めに相談することで、引継ぎ等がスムーズにこなせるため、円満退職を目指せます。
企業が中途採用を強化する主なタイミング

転職では、自分が希望する転職時期だけでなく、転職市場の時期的な傾向や採用活動のサイクルなども考慮しなければなりません。
企業によって中途採用を実施する期間は異なりますが、多くの企業が中途採用を強化する期間が存在します。
ここからは、企業が中途採用を強化する主なタイミングを4つ紹介します。
転職に最適な時期について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

新年度開始(4月)
新年度開始(4月)は、企業が中途採用を強化する時期です。
新年度が始まる時期は、事業計画のスタートと重なるため、新たな人材を求める企業が多くなります。
また、予算や人員の配置が見直されるため、ポジションの空きが発生しやすくなります。
さらに、社内の組織改編や部署異動も増えるため、新たな役割を担える即戦力が求められるでしょう。
下期開始(10月)
下期開始(10月)は、企業が中途採用を強化する時期です。
上期の業績や進捗を踏まえて人員計画を見直すタイミングとなるため、必要な人材を補充したい企業が多い傾向があります。
また、年度末に向けた目標達成のために即戦力を求める動きが活発化するのも下期開始時期の特徴のひとつです。
下期末前(2〜3月)
期末前(2〜3月)は、企業が中途採用を強化する時期です。
下期末前は、年度末に向けて人員の補充や欠員対応が必要になるため、採用ニーズが一時的に高まります。
また、来期の体制強化を見据え、先行して人材を確保しようとする企業も増加します。
さらに、短期間で即戦力を求める傾向があるため、経験者にはとくに有利なタイミングとなるでしょう。
新規事業・プロジェクト開始時
新規事業やプロジェクトの開始時は、企業が中途採用を強化する時期のひとつです。
新規事業やプロジェクトの開始時期は、新たな取り組みには専門的な知識や経験が必要とされるため、即戦力となる人材が求められます。
また、社内のリソースだけでは補いきれない場合も多く、外部からの人材確保に力を入れる傾向があります。
新規事業やプロジェクトが開始することを要因とした求人情報は、転職希望者にとっても好機となるでしょう。
退職タイミングを見極めるときのポイント【5つ】

転職のベストタイミングは、人によって異なります。
退職タイミングは、金銭面やキャリア面、精神面など多角的な視点から見極める必要があります。
ここからは、退職タイミングを見極めるときのポイントを5つ紹介します。

転職エージェントの意見を聞く
| 自分に合った退職タイミングを見極めるためには、転職エージェントの意見を聞いてみましょう。
転職エージェントは、転職市場の動向や企業側の採用計画に精通しています。
そのため、最適な時期を客観的にアドバイスしてくれるでしょう。
また、自分一人では気づきにくいリスクやタイミングのズレも、専門家の視点で補えてくれます。
信頼できるパートナーに転職時期を相談し、後悔の少ない転職活動を目指しましょう。

健康状態や精神的な余裕を優先する
| 自分に合った退職タイミングを見極めるためには、健康状態や精神的な余裕を優先しましょう。
体調が不安定な状態では、冷静な判断ができずに後悔する選択をしかねません。
また、精神的に追い詰められたまま転職活動を始めると、希望に合わない職場を選んでしまうでしょう。
自分の状態と向き合いながら進めることで、より良い転職先を選べます。

退職準備・引き継ぎに十分な期間を確保する
| 自分に合った退職タイミングを見極めるためには、退職準備・引き継ぎに十分な期間を確保しましょう。
慌ただしく退職を進めてしまうと、業務の整理が不十分になり、周囲に迷惑をかけてしまうことがあります。
丁寧に業務を引き継ぐことで、職場に対する信頼や評価を損なわずに円満退職できるでしょう。
また、時間に余裕を持つことで、自分自身も気持ちの整理がつきやすくなります。

転職先の入社時期や条件と調整する
| 自分に合った退職タイミングを見極めるためには、転職先の入社時期や条件と調整しましょう。
退職日と入社日がうまくかみ合わないと、収入の空白期間が生じて生活に不安が生じます。
また、転職先が希望しているタイミングに入社できることで、良好な関係を築きやすくなるでしょう。
条件の確認不足によるトラブルを避けるためにも、転職先との入社時期や条件などを事前にすり合わせましょう。
転職との交渉材料のひとつである給与の交渉について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。


生活資金や貯蓄の状況を確認する
| 自分に合った退職タイミングを見極めるためには、生活資金や貯蓄の状況を確認しましょう。
収入が一時的に途切れる期間がある場合でも、十分な備えがあれば落ち着いて行動できます。
準備不足で焦って決断することのないように、現実的な資金計画を立てておきましょう。
平均ボーナスが高い業種【7選】

転職を検討している方のなかには、現職よりもボーナスがたくさんもらえる業種へ転職したいと考えている人もいるでしょう。
そこで、ここからは平均ボーナスが高い業界を7つ紹介します。

商社
商社は、幅広い事業分野でグローバルにビジネスを展開しているため、ボーナスが高い傾向があります。
商社では、多様な取引やプロジェクトを成功させることで企業収益に貢献できます。
そのような貢献の度合いがボーナスに反映されます。
また、商社は競争が激しい業界です。
そのため、手厚い待遇で優秀な人材を確保しようとしています。
さらに、営業成績や業績連動の評価制度が整っていることもボーナスが高くなる要因のひとつです。

不動産・住宅
不動産・住宅は、市場の動向に左右されやすいため、ボーナスが高い傾向があります。
一例として、売買や賃貸の成約数が増えると企業の収益が大きく伸び、その成果がボーナスに反映されます。
また、不動産・住宅は営業職の個人成績による評価が重視されており、努力次第で報酬が増えるでしょう。
さらに、地域や物件の特性によってもボーナス額に差が出ることがあります。

情報・ソフトウェア
情報・ソフトウェアは、技術革新が激しいため、ボーナスが高い傾向があります。
新しい技術やサービスの開発が企業の成長に直結するため、成果が評価されやすくなります。
また、優れたスキルや実績を持つ人材が高く評価されるため、報酬面でのインセンティブが充実している企業も少なくありません。
さらに、プロジェクトの成功や市場での競争力向上もボーナスに反映されます。

通信
通信は、インフラ整備やサービス拡充が企業の収益に直結するため、ボーナスが高い傾向があります。
とくに、新規顧客の獲得や契約更新が業績に大きく影響するため、その結果が報酬に反映されやすくなります。
また、技術革新やサービスの多様化もボーナス額を高める要因のひとつです。

マスコミ・出版・広告
マスコミ・出版・広告は、広告収入や契約獲得が企業の業績に大きく影響します。
企業の成長を左右する重要な業種であるため、成果に応じた評価制度が整っており、営業成績や企画の成功が報酬に反映されやすくなっています。
また、マスコミ・出版・広告は、競争が激しい業界です。
そのため、優秀な人材を確保するために報酬を優遇する傾向があります。
さらに、時期や市場の動向によってボーナス額に変動が見られることもあります。

医薬品
医薬品は、高度な専門知識と研究開発が企業の競争力に直結するため、ボーナスが高い傾向があります。
とくに、新薬の開発や販売実績は企業の収益に大きな影響を与えるため、報酬に反映されやすくなっています。
また、資格や経験を持つ人材が重宝されるため、実力次第で評価が高くなることも少なくありません。
なお、市場の規制や需要の変動によってボーナス額が変化するため、医薬品業界を検討している方は注意しましょう。

建設
建設は、大型プロジェクトや公共事業の受注が企業の収益に直結するため、ボーナスが高い傾向があります。
とくに、工期や品質管理の達成度は、報酬に反映されやすくなっています。
また、専門技術や現場管理能力を持つ人材が重視されているため、待遇面が充実している企業も少なくありません。
なお、建設業界も景気の変動によって業績に影響が出やすく、ボーナスにも差が生じるため、注意しましょう。

ーまとめー
損しない転職を目指そう!

今回は、ボーナスをもらってから退職するメリット/デメリットや転職前にボーナスをもらうためにやるべきことなどを解説しました。
ボーナスを受け取ってから退職することで、退職後も資金面で余裕を持って生活できます。
しかし、ボーナスを受け取ることばかりに固執しすぎると、自分に合った企業との出会いが失われる恐れがあります。
長期的なキャリアを考慮しつつ転職時期を決め、損しない転職を目指しましょう!
転職の時期でお悩みの方は、転職エージェントなどに相談してみてください。
まとめ
損しない転職を目指そう!

今回は、ボーナスをもらってから退職するメリット/デメリットや転職前にボーナスをもらうためにやるべきことなどを解説しました。
ボーナスを受け取ってから退職することで、退職後も資金面で余裕を持って生活できます。
しかし、ボーナスを受け取ることばかりに固執しすぎると、自分に合った企業との出会いが失われる恐れがあります。
長期的なキャリアを考慮しつつ転職時期を決め、損しない転職を目指しましょう!
転職の時期でお悩みの方は、転職エージェントなどに相談してみてください。