
ジョブ型採用は、特定の職務に必要なスキルや経験を重視して人材を採用する方法です。
一般的な中途採用は経験や適性を重視するのに対し、ジョブ型採用は特定の職務スキルや経験を重視します。
本記事では、ジョブ型採用を導入している企業の特徴やジョブ型採用の対策などを解説します。
この記事を参考に、ジョブ型採用への理解を深め、転職活動を優位に進めましょう。

ジョブ型採用とは?

ジョブ型採用とは、職務内容・責任範囲・求められるスキルなどを明確に定義した「職務記述書(ジョブディスクリプション)」に基づいて人材を採用・配置する制度です。
ジョブ型採用は、仕事に対して人をあてる考え方で、採用後の仕事内容が明確であることが特徴です。
ジョブ型採用の起源は欧米、とくにアメリカの成果主義・職務主義文化から発展しました。
コロナ禍を契機に国内企業でもジョブ型採用の導入が進んでいます。
メンバーシップ型採用との違い
メンバーシップ型採用は、企業文化に適合する人材を採用し、柔軟な職務変更や成長を重視する制度です。
職務を限定せず、会社に合う人材を採用し、異動や育成を通じて長期的に活躍してもらうことを重視します。
一方、ジョブ型採用は職務内容を明確に定め、業務に合ったスキルを持つ人材を採用します。
企業がジョブ型採用を導入する理由【5つ】

パーソル総合研究所によると、57.6%の企業がジョブ型採用(ジョブ型人事制度)を導入検討・導入済とされています。
ここからは、企業がジョブ型採用を導入する理由を5つ紹介します。
専門性の高い人材の確保
企業は、競争力を維持するため、専門性の高い人材を確保しなければなりません。
ジョブ型採用は、特定の職務に必要なスキルや経験を重視しています。
そのため、専門性の高い人材を確保しやすくなります。
また、職務内容や求められる能力が明確にされているため、応募者は自分の強みを活かしやすく、企業は即戦力となる人材を獲得できるでしょう。
客観的かつ公正に評価する
企業は、従業員の能力を正当に評価しなければなりません。
ジョブ型採用では、職務記述書に基づき求められるスキルや成果を明確にできます。
そのため、応募者は職務に対する適性が客観的かつ公正に評価されます。
そのため、評価基準が透明になり、個人の能力や実績に応じた適切な評価が期待できるでしょう。
業務効率の向上と生産性の改善
企業は、競争力を維持し、利益を最大化するために業務効率と生産性を向上させなければなりません。
ジョブ型採用では、職務に必要なスキルを持つ専門性の高い人材を採用します。
そのため、業務の効率化が進みやすくなります。
また、明確な職務内容と評価基準により、社員は自分の役割に集中でき、業務の生産性が向上するでしょう。
その結果、組織全体のパフォーマンスが改善されます。
多様な働き方への対応
企業は、人材確保と定着を図るため、多様な働き方に対応しなければなりません。
ジョブ型採用は、特定の職務に求められるスキルや成果に焦点を当てます。
そのため、柔軟な働き方に対応しやすくなります。
一例として、フルタイムやパートタイム、リモートワークなど、多様な勤務形態での採用が可能です。
また、個々のライフスタイルに合わせた働き方が実現できます。
そのため、企業は幅広い人材を活用できます。
グローバルな人材市場への対応
企業は、優秀な人材を確保し国際競争に勝つため、グローバルな人材市場に対応しなければなりません。
ジョブ型採用は、職務ごとに求められるスキルが明確化できます。
そのため、国や地域を問わず適切な人材を採用しやすくなります。
これにより、グローバルな人材市場に対応し、優秀な人材を多国籍から確保できるでしょう。
また、グローバルなビジネス展開を支えるために、柔軟で効率的な採用戦略を実現できます。
ジョブ型採用が向いている企業の特徴【5つ】

ここからは、ジョブ型採用が向いている企業の特徴を5つ紹介します。
専門性の高い業務を担う
専門性の高い業務を担う企業は、求められるスキルや知識が明確です。
そのため、ジョブ型採用に適しています。
とくに、以下のような職種では、専門性の高い業務を担います。
専門性の高い業務を担う職種
- 食文化論
- 衛生法規
- 栄養学
- 食品学
- 食品衛生学
- 調理理論
また、職務ごとに人材を採用・配置できるため、即戦力として活躍できる人材を確保しやすくなり、生産性や業務の質の向上につながります。
役割が明確に定義されている
役割が明確に定義されている企業は、ジョブ型採用に非常に適しています。
とくに、以下のような職種では、役割が明確に定義されています。
役割が明確に定義されている職種
- カスタマーサポート
- 経理・財務担当
- 物流管理
- 法務担当
- 生産技術職
ジョブ型採用は、各職務に必要なスキルや成果が具体化されています。
そのため、採用基準や評価が明確になり、適切な人材を確保できるでしょう。
また、従業員も自身の業務範囲を把握しやすく、効率的に成果を出せます。
自律的なキャリア形成を支援している
自律的なキャリア形成を支援している企業は、ジョブ型採用に適しています。
とくに、以下のような職種では、自律的なキャリア形成を支援しています。
自律的なキャリア形成を支援している職種
- 人事・HR担当
- 研修・教育担当
- コンサルタント
- マーケティング職
- キャリアカウンセラー
ジョブ型採用は、職務内容や評価基準が明確です。
そのため、従業員は自身のスキルやキャリアの方向性に合わせて職務を選択・成長させやすくなります。
また、企業側も意欲ある人材を適材適所に配置できるため、双方にとって納得度の高い働き方が期待できます。
グローバルな人材戦略を持つ
グローバルな人材戦略を持つ企業は、ジョブ型採用に適しています。
とくに、以下のような職種では、グローバルな人材戦略を求められます。
グローバルな人材戦略を持つ職種
- グローバル人事(HR)担当
- グローバルタレントマネージャー
- 海外営業職
- グローバルマーケティング
- 国際法務担当
ジョブ型採用は、職務や求めるスキルが明確です。
そのため、国境を越えて即戦力となる人材を効率的に採用・配置できます。
また、言語や文化の違いを越えて共通の評価基準で人材をマネジメントできるため、国際競争力のある組織づくりが期待できます。
業績や成果が数値で明確に評価できる
業績や成果が数値で明確に評価できる企業は、ジョブ型採用に適しています。
とくに、以下のような職種では、業績や成果が数値で明確に評価できます。
業績や成果が数値で明確に評価できる職種
- 営業職
- マーケティング職
- 生産管理担当者
- 物流担当者
- データアナリスト
ジョブ型採用は、成果主義に基づく評価がしやすく、職務ごとの貢献度を客観的に把握できます。
そのため、適切な報酬や配置が可能です。
実績にもとづき待遇と職務を割り当てることで、従業員のモチベーションや生産性を向上できます。
職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)の項目【6つ】

ジョブ型採用には、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)が欠かせません。
そんな職務記述書には、さまざまな項目が設けられています。
ここからは、一般的な職務記述書の項目を6つ紹介します。
職務の目的
職務の目的は、その職種が企業や組織において果たす役割や使命を明確に記載する項目です。
職務を通じて達成すべき目標や貢献するべき分野を示し、候補者にその職務が組織全体にどう影響を与えるかを理解してもらうために設けられています。
また、職務の目的を明確にすることで、求職者は自分の役割を具体的にイメージしやすくなり、組織の戦略との整合性が保たれます。

具体例①
新規顧客の開拓と既存顧客との関係強化を通じて、売上の増加を目指し、企業の成長を支える。
顧客ニーズを理解し、的確な提案を提示することで、長期的な取引関係を構築する。

具体例②
組織の成長を支えるために、優秀な人材の採用と定着を目指し、人材育成プログラムを設計・実施する。
職場環境の改善や社員の満足度向上を通じて、企業全体の生産性と業績を向上させる。
職務内容
職務記述書では、その職種で日々行う業務やタスクを具体的に記載します。
一例として、業務の範囲や日常的な作業、求められるスキルや知識、使用するツール・システムなどを明示し、求職者がその職務の詳細な内容を理解できるようにします。
また、職務内容は職務の実態を反映しているため、応募者がその業務に適応できるか判断しやすくなるでしょう。

具体例①
求人広告の作成・掲載から面接の実施、採用決定までを担当。
新入社員のオンボーディングプログラムの策定・実施を担い、社員のキャリアパス設計と評価・フィードバックを通じて、組織内の人材育成を支援する。

具体例②
市場調査の実施と分析を基に、ターゲット市場向けの広告・プロモーション戦略を立案。
デジタル広告、SNS運営、イベント企画を通じてブランド認知度を向上させ、コンバージョン率を改善する施策を推進。
職務の責任範囲
職務記述書では、その職種における責任の範囲や範疇を明確にします。
具体的には、どの業務に対して最終的な責任を負うのか、他の部署やチームとの連携の度合い、意思決定権の有無などを記載します。
職務の責任範囲を明確にすることで、求職者は自身が担うべき責任を理解し、職務に対する期待値を明確に把握できるでしょう。
また、責任範囲を明確にすることで、職務の重要性や求められる結果も分かりやすくなります。

具体例①
マーケティング戦略の立案から実行、効果測定までの一連のプロセスを担当。
広告予算の管理、広告配信を最適化し、ブランド認知度や売上に対する成果を評価・報告する。
予算内での効果的なマーケティング活動を実現する責任がある。

具体例②
新規顧客開拓と既存顧客の関係維持に関する責任を負う。売上目標を達成するため、担当エリアや顧客に対する営業戦略を立案・実行し、結果を上司に報告する。
また、契約締結後にアフターフォローを実施し、顧客満足度を維持する。
必要なスキル・経験・資格
職務記述書では、その職種に求められる専門的なスキル、過去の職務経験、必要な資格を明記します。
必要なスキル・経験・資格には、業務遂行に不可欠な技術的スキルや知識、実務経験の年数、資格の有無などが含まれます。
必要なスキル・経験・資格を通じて、求職者は自分の適性を確認できるようにするため、具体的で現実的な条件を提示しましょう。
また、業務を効率的に遂行できる能力が求められるため、職務に必要な条件を明確に設定してください。

具体例①
スキル:優れたコミュニケーション能力、交渉力、プレゼンテーションスキル
経験:B2B営業経験3年以上、新規顧客開拓経験
資格:普通自動車免許(営業車使用の場合)、営業関連の資格(例:販売士資格)

具体例②
スキル:人事関連の知識(採用、労務管理)、コミュニケーション力、問題解決能力
経験:採用活動の実務経験2年以上、社員教育・研修の実施経験
資格:社会保険労務士資格(尚可)、人事関連の資格(例:人事検定)
期待される成果や目標
職務記述書では、その職種において達成すべき具体的な成果や業績目標を示します。
期待される成果や目標には、業務の遂行によって達成すべき売上目標や業務効率、品質基準などの定量的な成果や、プロジェクト完了などの定性的な目標も含まれます。
目標を明確に設定することで、求職者は職務の成功基準を理解し、自身の成果をどのように評価されるかを把握できるでしょう。

具体例①
年内に採用コストを10%削減し、優秀な人材を3名以上採用する。
社員の定着率を向上させ、年次評価で80%以上の社員が昇進基準を満たすよう支援する。

具体例②
年度内にWebサイトの訪問者数を30%増加させ、SNSフォロワー数を50%増加させる。
広告キャンペーンのROIを15%以上改善し、製品の認知度向上を図る。
報酬・待遇
職務記述書では、その職種に対する給与や福利厚生、昇給・賞与の仕組みなどを明確に記載します。
報酬・待遇には、基本給や手当、インセンティブ、福利厚生(例:健康保険、年金制度、休暇制度など)に加え、給与水準や昇進の可能性なども含まれます。
求職者に対して、職務に見合った待遇が提供されることを示すことで、応募者が自身の希望と一致しているかを確認できるでしょう。

具体例①
年収:500万円〜700万円(基本給+成果に基づくボーナス)
年間成果に応じたパフォーマンスボーナス支給。
昇給:年1回、賞与:年2回。
福利厚生:社会保険完備、定期健康診断、リモート勤務の選択肢あり。

具体例②
年収:400万円〜600万円(基本給+インセンティブ)
インセンティブは達成した営業目標に基づき支給。
昇給:年1回、賞与:年2回(業績連動)。
福利厚生:社会保険完備、交通費全額支給、退職金制度あり。
ジョブ型採用に対応するための対策【5つ】

ここからは、ジョブ型採用に対応するための対策を5つ紹介します。
職務内容を明確に伝えられる職務経歴書の作成
ジョブ型採用では、企業が求める職務に対して求職者がどれだけ適合しているかが重視されます。
自身の担当業務や成果、役割を具体的に示した職務経歴書を作成することで、スキルや経験を正確に伝えられ、採用担当者に即戦力としての適性を効果的にアピールできます。
専門性・スキルの可視化
ジョブ型採用では、職務ごとに必要なスキルや知識が明確に定義されています。
自身の専門性やスキルを具体的に示すことで、職務要件との適合性を判断してもらいやすくなります。
また、専門性やスキルを可視化することで、即戦力としての信頼性が高まり、選考における説得力が増すでしょう。
ポータブルスキルを協調
ジョブ型採用では、専門性が重視されます。
しかし、専門性と同じくらい職場での応用力や柔軟性も重要視されます。
コミュニケーション力や課題解決力などのポータブルスキルは、業種や職種を問わず活かせます。
ポータブルスキルを通じて汎用性の高さを示すことで、長期的に活躍できる人材としてアピールできるでしょう。
キャリアの方向性を明確にする
ジョブ型採用では、職務内容が明確に定義されています。
そのため、企業は応募者のキャリアの方向性が自社のニーズと合致しているかを重視します。
自身の専門性や将来的に目指す姿を明確にすることで、企業とのマッチ度を示せると同時に、志望動機や職務適性の説得力が高まるでしょう。
業界や職種ごとの傾向を把握
ジョブ型採用では、業界や職種ごとに求められるスキルや成果の基準が異なります。
事前に業界特性や職種ごとの職務内容を理解しておくことで、自身の経験や強みを的確にアピールできます。
また、判断材料が多くなるため、企業とのミスマッチを防げるでしょう。
転職先としておすすめな業界について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

ジョブ型採用の求人情報を取得する方法【3つ】

ここからは、ジョブ型採用の求人情報を取得する方法を3つ紹介します。

ジョブ型採用に特化した求人サイト
| ジョブ型採用に特化した求人サイトでジョブ型採用の求人情報を探すときは、サイト内の検索機能を使って「ジョブ型採用」や「職務記述書」などのキーワードで求人を絞り込みましょう。
また、職種や求められるスキル、業界などでフィルターをかけ、希望する条件に合った求人情報を効率的に取得できます。

企業の公式採用ページ
| 企業の公式採用ページでジョブ型採用の求人情報を探すときは、ジョブ型採用の求人情報が掲載されている専用のセクションを利用してください。
また、「募集職種」や「職務記述書」などの項目から、役割や業務内容が明確に記載されたジョブ型採用求人を確認できます。
さらに、サイト内検索機能で「ジョブ型採用」を入力して絞り込む方法も有効です。

転職エージェント
| 転職エージェントでジョブ型採用の求人情報を探すときは、ジョブ型採用に特化した求人を扱うエージェントを選び、相談時に「ジョブ型採用」に関心があることを伝えましょう。
ジョブ型採用に関心があることを伝えると、エージェントが求職者の希望に合った職務内容や職種を持つ求人を提案してくれるため、スムーズにジョブ型採用の求人情報を取得できます。

ーまとめー
ジョブ型採用で転職を成功させよう!

本記事では、ジョブ型採用を導入している企業の特徴やジョブ型採用の対策などを解説しました。
ジョブ型採用は、特定の職務に求められるスキルや経験が重視されます。
そのため、自己の専門性を活かせます。
また、職務内容や目標が明確で、業務に対する責任や成果が具体的に求められるため、成長の機会も増えるでしょう。
自分の強みを発揮しやすく、キャリアアップを実現しやすい環境を求めている方は、ジョブ型採用での入社を検討してみてください!
まとめ
ジョブ型採用で転職を成功させよう!

本記事では、ジョブ型採用を導入している企業の特徴やジョブ型採用の対策などを解説しました。
ジョブ型採用は、特定の職務に求められるスキルや経験が重視されます。
そのため、自己の専門性を活かせます。
また、職務内容や目標が明確で、業務に対する責任や成果が具体的に求められるため、成長の機会も増えるでしょう。
自分の強みを発揮しやすく、キャリアアップを実現しやすい環境を求めている方は、ジョブ型採用での入社を検討してみてください!