退職時の挨拶は、今まで一緒に働いてきた職場の上司や同僚たちに感謝を伝えることができる最後のチャンスです。しかし、ほとんどの人にとって退職というのはあまり経験するものではなく、どうすればいいのか不安に思う人も多いのではないでしょうか。この記事では、退職の挨拶でしっかりと感謝を伝え、良い印象を残すためのポイントを例文つきで紹介します。
この記事を参考に、自分に合った仕事を見つけ、キャリアアップを目指しましょう。
退職時の挨拶の基本構成と例文
まずは退職時の挨拶の基本的な構成を例文付きでご紹介します。緊張していてもこれだけは外さないようにしましょう。
退職日
まずは退職日を伝えましょう。退職の挨拶は最終出社日の朝など、最後の日に時間をとってもらえることが多いようです。しかし、特にそれより前のタイミングで挨拶をする場合は、いつ退職するのかを正確に伝えるようにしましょう。
【例文】
- 今日で退職する場合:本日付で退職します。
- 後日退職する場合:○日付で退職します。
感謝の言葉
退職の挨拶は、単に退職することを伝えるためだけでなく、今までお世話になった人に感謝を伝えるためのものでもあります。退職の理由によっては、感謝というより不満が大きい…という場合もあるかもしれませんが、良い印象を残して円満に退職するためにも、感謝の言葉は必ず伝えましょう。
【例文】
- 今まで大変お世話になりました。
- 本当にありがとうございました。
- 感謝の気持ちでいっぱいです。
締めの言葉
お礼の言葉とは別に、次のような締めくくりの言葉を入れると、さらに印象が良くなります。よくある締めの言葉は以下の通りです。
【例文】
- (会社名)の発展を心よりお祈り申し上げます。
- みなさまのご健康とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
退職時の簡単な挨拶の例文
最後に、退職日と感謝の言葉を入れた、短い挨拶の例文を紹介します。「一言でお願いします」と指示があった場合などの参考にしてみてください。
【例文】
- 一身上の都合により、本日付けで退職することになりました。今まで大変お世話になりました。この会社での経験を活かして今後も頑張っていきたいと思います。最後になりますが、みなさまのご健康とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
- 挨拶の時間をいただきありがとうございます。このたび結婚を機に、⚪︎日付けで退職する運びとなりました。みなさまのおかげで社会人として成長し、充実した日々を過ごせました。⚪︎年間ありがとうございました。(会社名)の発展とみなさまのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
退職時に良い印象を残せるエピソードトーク例
ここまでで、最低限伝えるべきことを含めた、簡単な挨拶の例を紹介してきました。しかし、退職時の挨拶というのはこれまでお世話になった職場に感謝を伝えられる最後のチャンス。簡単な挨拶の例では少し味気なく感じてしまうかもしれません。もちろん、話す時間があまりない場合や、「手短に」と求められた場合は、先ほどの簡単な挨拶で済ませるべきです。しかし、ある程度時間に余裕があり、しっかりと感謝を伝えたい場合は、短めのエピソードを交えるのがおすすめです。次のようなエピソードトークを通して、職場への感謝をよりよく伝えることができるでしょう。
エピソード例①新人の頃の話
新人の頃というのは、先輩や上司に一番支えてもらう時期です。特に当時お世話になった教育係や上司が挨拶の場にいる場合、その人に何かを教えてもらったり、助けてもらったりしたエピソードを通して感謝を伝えましょう。
【例文】
- 〇〇さんは新卒で入社したばかりの私に、社会人としての基本的なマナーや振る舞いを教えてくれました。
- 未経験で入社し、戸惑うことも多かったのですが、〇〇さんをはじめ部署のみなさまのサポートのおかげで、業務に慣れることができました。
エピソード例②失敗談・スランプの話
新人の頃と同様に、失敗した時やスランプに陥っていた時期も、周りの人に支えてもらっていたはずです。周りの人のサポートによって、失敗やスランプから立ち直ることができたエピソードなどがあれば、それもスピーチに盛り込むのがおすすめです。
【例文】
- 〇〇では初めてプロジェクトリーダーをお任せしていただきましたが、最初はチームをどのようにまとめていけばよいか分からず、戸惑うばかりでした。しかし、先輩方のご指導やメンバーのみなさまのご協力のおかげで、少しずつリーダーシップを身につけることができました。
- 成績が伸びず悩んでいた時に、〇〇さんに相談に乗っていただき、困難を乗り越えることができました。先輩方が親身に話を聞いてくれるのが、(会社名)の良いところだと思います。
退職時の挨拶でやってはいけないこと
近いうちに退職する会社とはいえ、最後までしっかりマナーを守り、トラブルにならないよう配慮することが大切です。特に次のようなことをしてしまうと、せっかくの挨拶がかえって悪い印象になってしまうことがあるため、注意しましょう。
詳細な退職理由を伝える
退職時の挨拶で、退職の理由を詳しく話す人もいるかもしれません。しかし、あえて詳しい退職理由を伝える必要はありません。家庭の事情や会社でのトラブルなど、全て「一身上の都合」として大丈夫です。事情を話す場合も「結婚を機に」など、一言で済ませるようにしておくのがおすすめです。もちろん多くの場合は退職の理由を伝えてしまってもトラブルになることはありませんが、余計な詮索や追求を受けたり、思わぬところで不快に思う人が出てきたりする場合もあります。よほどの理由がない限り、退職理由は詳しく話さない方が無難です。
次の勤務先を伝える
退職時の挨拶で、悪気なく転職先の会社名を伝えてしまう方もいるかもしれません。しかしこれも退職理由と同様に、思わぬところでトラブルを招く可能性があります。会社名だけでなく、業界や業種など、転職先の話はあえて伝える必要がないものなので、挨拶の際の話題には出さないようにしましょう。
愚痴や否定的なことを言う
ハラスメントや過酷な労働条件など、今の職場に問題があって辞める人の場合、退職の挨拶の時も複雑な感情があると思います。しかし、当たり前ですが退職の原因となった相手が挨拶の際にもいる場合、トラブルに発展してしまうおそれがあります。そもそも特定の相手がいるような内容でなくても、ネガティブな内容は聞いていて気持ちの良いものではありません。退職の挨拶の場ではあくまで感謝や良い面だけを伝えるようにしましょう。
スピーチが長すぎる
どんな内容でも、長すぎるスピーチは聞いていてだんだん辛くなってきてしまうものです。お世話になったエピソードなどを入れようとすると、話したい内容がどんどん出てきてしまう方もいるかもしれませんが、スピーチの時間は最大3分ほどにしておきましょう。
退職時の挨拶のポイント
ここまでで退職時の挨拶の例文や、やってはいけないことをお伝えしてきました。これらの基本的なことに加え、次のようなポイントに注意すると、より好印象を残せるでしょう。
人前で話す時の基本を抑える
プレゼンテーションや面接など、人前で話す時には、話す内容だけでなく、話し方や表情などにも注意が必要ですよね。退職時の挨拶でも、人前で話す時の振る舞いのポイントを抑えることで、より印象が良くなります。具体的には、次のような点に注意しましょう。
人前で話す時の振る舞いのポイント
- 早口にならずゆっくり話す
- 聞いている人に視線を向けながら話す
- 笑顔ではきはきと話す
原稿の読み上げにならないようにする
特に人前で話すのが苦手な方は、原稿を作って暗記しようとしているかもしれません。しかし、原稿を暗記して読み上げるようなスピーチは事務的になってしまい、気持ちの部分が伝わりにくい傾向にあります。原稿を作ったとしても、ところどころアドリブを入れたり、自然な話し言葉になるようにアレンジしたりと、読み上げ感をなくす工夫をするのがおすすめです。
また、話す内容やポイントだけを決めておいて、細かいところは話しながら考えることにすると、自然な印象になって気持ちも伝わりやすくなります。原稿がないと上手く話せないという方も多いかもしれませんが、退職時の挨拶はプレゼンテーションなどと違って、上手に話すことが重要なわけではありません。しっかり気持ちがこもっていることが好印象に繋がるので、あまり硬くなりすぎず、自然体に近い状態で感謝を伝えられるようにしましょう。
不在だった人にも直接挨拶する
退職の際に職場側から挨拶やスピーチの場を設けてもらっても、当然その場にはいない人もいるでしょう。その場合、できるだけ直接会って個別に退職の挨拶をしに行くのがおすすめです。もちろんメールなどで退職を伝えることもできますが、今の職場を退職すると、もう二度と会わないということも少なくありません。特にお世話になっていた人には、可能な限り直接挨拶するようにしましょう。
メールで退職の挨拶をする場合の例文
上でもお話しした通り、その人との最後になるかもしれない退職の挨拶は、できる限り直接するのが理想です。しかし、どうしても都合が合わない人もいるでしょう。そのような場合、メールで退職を伝えることになります。ここでは、メールで退職挨拶をする場合のメールの内容を例文とともにご紹介します。
件名
ビジネスメールの基本ですが、メールの件名は用件が伝わりやすいものにしましょう。
具体例
(所属部署)(氏名)退職のご挨拶
メールで挨拶をすることについてのお詫び
やむをえない事情があっても、退職の挨拶は直接することが基本的な礼儀です。それを踏まえて、直接の挨拶ができないことへのお詫びを一言入れるようにしましょう。
【例文】
- 本来であれば、直接ごあいさつを申し上げるべきところですが、メールにて失礼いたします。
- メールでのご挨拶となりましたことをお詫び申し上げます。
感謝の気持ち
直接挨拶をする場合と同様に、感謝の気持ちは必ず伝えることが大切です。
【例文】
- 入社以来大変お世話になりました。
- ⚪︎年間ありがとうございました。
- 多くのことを学ばせていただきました。
- ご指導いただき心より感謝申し上げます。
私用の連絡先
特に会社用のメールアドレスでしか連絡を取っていなかった相手とは、退職後に連絡を取る術がなくなります。もちろん、私用の連絡先を共有するのは必須ではありませんが、これから先も連絡したい相手の場合は、私用の連絡先を忘れずに共有しておきましょう。
具体例
退職後の連絡先は以下の通りです。今後ともよろしくお願いいたします。
メールでの退職挨拶の例文
最後に、以上の内容を盛り込んだメールの例文をご紹介します。
具体例
お世話になっております。
(部署名)の(氏名)です。
この度、一身上の都合により本日付で退職することになりました。
(相手氏名)様には入社以来大変お世話になりました。
退職後の連絡先は以下のとおりです。
今後ともよろしくお願いいたします。
mail:
Tel:
本来であれば直接ご挨拶すべきところですが、メールにて失礼いたします。
(相手氏名)様のますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
メールでの退職挨拶をする際のポイント
メールでの退職挨拶には、対面での挨拶とはまた違った注意点やマナーがあります。文章の内容だけでなく、次のようなポイントに注意しましょう。
一斉送信はしても良いが注意
人によってはメールで退職挨拶をすべき相手が多く、一人一人にメールを作成するのは大変という方も多いでしょう。基本的には、退職挨拶のメールを一斉送信で送っても問題はありません。ただし、受信者からお互いのアドレスがわからないようにする「Bcc」で送るように注意しましょう。
直接指導してもらったことのある上司など、特にお世話になった相手には、なるべく一斉送信ではなく個別でメールを送り、しっかりと感謝を伝えるようにするのがおすすめです。
メールを送るタイミング
メールで退職挨拶をする場合、最終出社日の夕方にメールを送るのが一般的です。ただし、会社によって様々なタイミングがあるので、以前社内の人から受け取った退職挨拶のメールの日時を参考にすると良いでしょう。
最終出社日の退職挨拶の流れ
最終出社日には、多くの人に退職の挨拶をすることになります。直接の挨拶、メールでの挨拶を含め、最終出社日にすることになる退職挨拶とそのタイミングをまとめました。当日のチェックリストとして参考にしてみてください。
①退職の挨拶・スピーチ
職場によっては、最終出社日の朝礼などで挨拶やスピーチの時間を作ってくれます。冒頭で紹介した例文を参考に、その場にいる人たちに感謝を伝えましょう。
②個別の挨拶回り
夕方からは、特にお世話になった上司や同僚に個別に挨拶をしていきましょう。この際、お菓子などを手渡しするのもおすすめです。その場合、百貨店やデパートで買えるプレゼント
用のお菓子で、個包装になっているものを選びましょう。
③メールを送る
挨拶回りが終わったら、直接挨拶ができなかった人に退職挨拶のメールを送ります。最終出社日の当日はバタバタしていることもあるので、予め文面を用意しておくのもおすすめです。また、可能な場合は自動送信機能を利用するのも良いでしょう。その場合、しっかり送れているのか退社前に確認するのも忘れずに。
社外の人に挨拶する場合
普段の業務で社外の特定の人と関わっていた場合、その人にも退職を伝える必要があります。社外の人への退職挨拶は、感謝を伝えるだけでなく、引き継ぎという重要な意味もあります。後任の担当者とも協力しながら、他社の担当者と引き継ぎ内容を共有し、変更点等を漏れなく伝えることが大切です。
直接挨拶に行く場合
取引先などに直接退職の挨拶に行く場合、引き継ぎを兼ねて挨拶するのが一般的です。そのため、基本的に後任の担当者を連れて訪問することになります。退職の旨と感謝を伝えた後、後任の担当者を紹介し、引き継ぎを行いましょう。
メールで挨拶する場合の例文
社外の人への退職挨拶メールも、基本的な内容は社内の人に送るメールと同じです。メールでの挨拶となったことに対するおわびと感謝の気持ちを伝えましょう。件名は社外の相手のため、氏名の前に会社名を入れるようにします。その後、後任者の情報や引き継ぎ内容を伝えましょう。
具体例
お世話になっております。
(会社名)の(氏名)です。
私事で恐縮ですが、(日付)をもちまして(会社名)を退職するはこびとなりました。
(相手氏名)様には多大なるご協力をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。
引き継ぎは、後任の(後任者氏名)へ行っております。
何かございましたら、ご遠慮なくご連絡ください。
後任者名:
連絡先:
本来であれば直接ご挨拶に伺うべきところ、
メールでのご連絡となりましたこと、お詫び申し上げます。
(相手氏名)様のご活躍をお祈りいたします。
余裕をもって早めに連絡する
退職する場合、取引先にも引き継ぎに向けて準備や対応をしてもらう必要が出てきます。退職の挨拶をした後も連絡を取り合う必要が出てくる場合もあるため、余裕を持って退職を伝えるようにすることが大切です。具体的には退職の2-3週間前に伝えるようにすると良いでしょう。それよりも後になってしまうと、急な印象になってしまい、取引先に不安を与えてしまう上、万が一引き継ぎで問題が生じても対応しきれないかもしれません。
手紙の場合の注意点と例文
職場によっては手紙での退職挨拶が必要になる場合もあるでしょう。主な内容はメールの場合と同様ですが、手紙の場合は特有のマナーがあります。特に、基本的な構成はしっかり守るようにしましょう。挨拶として送る手紙の構成は、一般的に以下の通りです。
- 頭語
- 時候の挨拶
- 本文
- 結びの挨拶
- 結語
- 日付
- 差出人
- 宛名
特に注意が必要な、頭語・結語、時候の挨拶、結びの挨拶について解説していきます。
①頭語と結語を入れる
手紙では、文頭に頭語、文末に結語を入れます。頭語・結語と言われるとピンとこない方も多いかもしれませんが、最も有名な拝啓・敬具はみなさん聞いたことがあるのではないでしょうか。頭語・結語は拝啓・敬具以外にも様々なものがありますが、退職の挨拶では拝啓・敬具で大丈夫です。頭語・結語は対になっているので、もし別のものを使う時は正しい組み合わせになるよう注意が必要です。
②時候の挨拶
拝啓を書いた後、本文の書き始めには「時候の挨拶」が必要です。時候の挨拶は季節によって言い回しが変わるので、手紙を送る時期に合った挨拶を調べておきましょう。自信がない方は、どの季節にも使える「時下」でも大丈夫です。ここでは、時下の挨拶と、退職する人が多い3月、12月の挨拶の例をご紹介します。
【例文】
- 時下、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
- 3月:春光天地に満ちる季節となり、より一層ご清祥のことと存じます。
- 12月:師走を迎え、一層ご隆盛のこととお喜び申し上げます。
③結びの挨拶
手紙を締めくくる結びの挨拶は、相手に良い印象を残すために意外に重要になってきます。退職を知らせる手紙の結びの挨拶としては、次のようなものがあります。
【例文】
- 略儀ながら、書面をもちましてご挨拶申し上げます。
- 今後もご縁がございましたら嬉しく思います。
ーまとめー
退職の挨拶でしっかりと感謝を伝え、円満退職を目指そう!
今回は、退職の挨拶でしっかりと感謝を伝え、良い印象を残すためのポイントを例文つきで紹介しました。
退職の挨拶で感謝を伝えることで、良好な人間関係を維持し、将来的な再会や協力の機会にもつながります。
正しいマナーに基づき、退職の挨拶を済ませましょう!
まとめ
退職の挨拶でしっかりと感謝を伝え、円満退職を目指そう!
今回は、退職の挨拶でしっかりと感謝を伝え、良い印象を残すためのポイントを例文つきで紹介しました。
退職の挨拶で感謝を伝えることで、良好な人間関係を維持し、将来的な再会や協力の機会にもつながります。
正しいマナーに基づき、退職の挨拶を済ませましょう!